不動産会社は、売買仲介に関連して価格査定を行う場合は料金を請求することはできません。必ず無料で査定する必要があります。また、「査定料」「調査費」「書類作成費」「事務手数料」などの名目で費用請求することも禁止され、仲介手数料上限額が、請求可能な額の上限となります。
ただし、媒介業務(不動産仲介)と切り離した独立のコンサルティング契約として行われる場合は、有料での不動産査定であっても、違法性があるとはいえません。
つまり「有料査定はすべて違法」という理解は不正確で、「違法性が高い」と解される場合と、「違法ではない」と解される場合があります。
この点、多くの人が雑な理解で「有料=違法」と断定している点が気になります。そこでこの記事では、宅建業の実務を踏まえて、有料査定で違法性が疑われるケースと、違法ではないケースを切り分けていきます。
本稿では、宅地建物取引業法(以下「宅建業法」)の具体的な条文や国土交通省の通達を根拠に、有料での価格査定の是非について考えていきます。しかし、実際の運用にあたっては、弁護士など専門家に相談してください。
有料の不動産査定が違法になる場合とは

不動産会社が「売却しませんか」という文脈で行う価格査定において、費用を請求することは、原則として違法性が疑われます。
根拠は宅建業法第34条の2第2項にあります。
この条文は、宅建業者が媒介契約の締結に際して価格について意見を述べる場合、その根拠を明示しなければならないと定めています。つまり、仲介手数料の範囲内で根拠を明示する(=査定書を出す)義務があるということ。
さらに、国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係4項(3))には、こう明記されています。
「根拠の明示は、法律上の義務であるので、そのために行った価額の査定等に要した費用は、依頼者に請求できないものであること」
法律上の義務を果たすための価格査定に、別途費用を請求することはできません。
さらに宅建業法第46条に基づく報酬告示(昭和45年建設省告示第1552号・最終改正令和6年国土交通省告示第949号)の第十一①は、こう定めています。
「宅地建物取引業者は…第二から第十までの規定によるほか、報酬を受けることができない。ただし、依頼者の依頼によって行う広告の料金に相当する額については、この限りでない。」
告示が明示する例外規定は依頼者の依頼による広告料金のみです。
さらに、国土交通省通達「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係4項(3)・第46条第1項関係)には、査定・調査・書類作成に伴う費用が仲介手数料に含まれる旨が明示されています。
そのため「査定料」「調査費」「書類作成費」「事務手数料」などの名目による別途請求は、告示第十一①違反(宅建業法第46条・超過報酬の受領)として行政処分の対象になりえます。
なお、ローンあっせん手数料の受領可否については、国土交通省への法令照会で「法令に抵触する可能性がある」との見解が示された事例があります。令和4年度法令実例研究会報告書でも、媒介業務との線引きやルール作りが課題とされました。
結論として、不動産会社(宅建業者)が仲介業務にからんで行う売却査定の費用を依頼者に請求することは、宅地建物取引業法第34条の2第2項および第46条により禁止されていると考えてよいでしょう。
費用名目別の適法性
ではここで、価格査定を含めて、どのような名目での費用請求が違法と考えられ、どのような名目であれば適法と考えられるのかを整理しておきます。
以下の表のように、コンサルティング料に分類される項目や、顧客の依頼で実行した場合の出張費などは適法と考えら得れる余地が大きいといえます。
| 費用の名目 | 適法性の判断 | 根拠 |
|---|---|---|
| 媒介業務に付随した査定料・相談料 | 違法の可能性が高い | 宅建業法34条の2第2項・46条 |
| 現地調査費(一般物件) | 違法の可能性が高い | 仲介手数料に含まれる業務 |
| 書類作成費・事務手数料 | 違法の可能性が高い | 媒介業務の中核業務として包含される |
| コンサルティング料 | 条件次第(後述) | 宅建業法34条の2第7項・46条通達 |
| 出張費 | 条件付きで適法 | 事前依頼・合意・実費の三要件が必要 |
なお2024年(令和6年)7月1日施行の改正報酬告示(令和6年国土交通省告示第949号)により、売買代金800万円以下の「低廉な空家等」については、事前に売主の承諾を得た場合に限り、現地調査等に要する費用として最大33万円(税込)まで報酬に含めることが認められるようになりました。
適法なケース① 不動産鑑定士の鑑定評価

「有料でも適法」な代表例が、不動産鑑定士(国家資格)による鑑定評価です。
根拠法は「不動産の鑑定評価に関する法律」です。不動産鑑定士は同法に基づき「不動産鑑定評価書」という公的な評価書類を発行できます。これは宅建業者が行う査定とは、法的根拠・証拠能力・評価手法のすべてが異なります。
| 比較項目 | 宅建業者の査定 | 不動産鑑定士の鑑定評価 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 宅建業法第34条の2 | 不動産の鑑定評価に関する法律 |
| 費用 | 原則無料 | 有料(土地・建物で20〜40万円程度) |
| 主な目的 | 売却価格の参考意見 | 裁判・相続・税務・資産評価等 |
| 成果物の名称 | 査定書・価格意見書 | 不動産鑑定評価書 |
| 証拠能力 | 限定的(参考資料) | 公的な証拠として利用可 |
| 評価手法 | 主に取引事例比較法 | 三手法(原価法・収益還元法等)の併用 |
重要なのは、不動産鑑定士でない者が報酬を得て「不動産の鑑定評価」を業として行うことは、同法第3条・第39条で厳格に禁じられているという点です。無資格で行えば1年以下の懲役または100万円以下の罰金という刑事罰が科される可能性があります。
宅建業者が「不動産鑑定評価書」という名称の書類を作成し、対価を受け取る行為は、それだけで重大な法違反になりえます。宅建業者に「鑑定書」を依頼するのではなく、「査定書」を依頼するというのが正しい理解です。
適法なケース② 不動産会社によるコンサルティング契約

実は、不動産鑑定士以外の宅建業者が有料で価格調査を提供できるケースもあります。「媒介業務から完全に切り離した、独立したコンサルティング契約」として行う場合です。
根拠は宅建業法第34条の2第7項および第46条に関する国土交通省通達です。
「宅地建物取引業者が媒介業務以外の不動産取引に関連する業務を行う場合には、媒介業務に係る報酬とは別に当該業務に係る報酬を受けることができる」(宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方 第46条第1項関係6)
筆者自身、弁護士や司法書士から査定依頼を受けた経験があります。裁判における財産分与の算定や、遺産分割協議における参考価格として依頼されたものです。つまり、法律の専門家も「媒介を前提としない、独立した調査業務として契約すれば法的問題はない」という認識をもっているわけです。
ただし、適法とされるための条件もあります。「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(第34条の2関係7項・第46条第1項関係6)は次の要件を定めています。
- 成果物の書面交付:調査報告書など具体的な成果物を書面で渡すこと
- 媒介業務との完全な分離:売却仲介の受託とは別の業務として独立した位置づけであること
- 別個の書面契約の締結:媒介契約書とは別に、コンサルティング契約書を作成すること
- 業務内容・報酬を事前に明示し合意:何をいくらで提供するかを書面で事前に説明し、依頼者の承諾を得ること
加えて、行政処分事例から実務上の要件と判断されるものが次の点です。
- 業務の実態:名目だけの契約では足りず、契約通りの業務が実際に履行されていること。過去、建築請負コンサルティング料を請求しながら実際には業務を行わなかった業者が業務停止処分を受けた事例があります。
なお、成果物(調査報告書等)には「本報告書は不動産の鑑定評価に関する法律に基づく鑑定評価書ではない」旨を明記し、価格表記も「鑑定評価額」ではなく「査定価格」や「売却予想価格」とすることが実務上の安全策とされています。
「コンサルティング料」という名目であっても、実態が通常の媒介業務(案内・交渉・重要事項説明等)の延長に過ぎない場合は、超過報酬として処分の対象になりえます。
価格査定の料金等の請求を受けたときの判断フロー

不動産価格査定費用もそうですが、不動産会社から仲介手数料以外の費用を請求されたときは、次の順序で確認し、対応を検討してください。
媒介契約を前提とする査定であれば、原則違法です。着手金・査定料・相談料のいずれも認められていません(国土交通省通達)。
現地確認・登記簿等の調査・査定書作成・重要事項説明・契約書作成などは、すべて仲介手数料に含まれる業務です。別途請求は原則として宅建業法第46条違反になります。
遠隔地の出張費や特別な広告費は、依頼者の明示的な依頼と事前の金額承諾があり、かつ実費の範囲内であれば請求可能です(標準媒介契約約款・報酬告示)。業者が一方的に設定した料金は認められません。
有料で「鑑定評価」を行えるのは国家資格者のみです。宅建業者が「鑑定書」を発行し対価を受け取る行為は、不動産鑑定評価法違反として刑事罰の対象となる可能性があります(「査定書」と違い「鑑定書」は出せない)。
低廉な空家等の場合、2024年7月施行の改正告示により特例が設けられています。事前の承諾があれば最大33万円(税込)まで報酬への加算が認められます。
売却目的なら鑑定は不要な場合が多い

ところで「正確な価格を出したいから鑑定士に頼もうか」と、有料の不動産鑑定を考える人がいますが、一般的な売却目的であれば不動産会社の無料査定で十分です。費用をかけて鑑定評価書を取得しても、最終的な成約価格は市場(買主との交渉)によって決まるからです。
不動産鑑定評価書が実際に必要になるのは、次のような場面です。
| 場面 | 理由 |
|---|---|
| 遺産分割(相続) | 親族間の公平な分け方に客観的根拠が必要 |
| 離婚時の財産分与 | 裁判・調停での証拠資料として精度と信頼性が必要 |
| 相続税申告 | 路線価と実態が乖離している場合の節税根拠として |
| 共有物分割 | 一方が持分を買い取る際の適正価格の証明 |
| 親族・知人間売買 | 低額譲渡とみなされないための第三者価格の確保 |
上記に当てはまらない通常の売却であれば、複数の不動産会社に無料査定を依頼し、価格の根拠(近隣の成約事例)を比較するほうが実用的です。査定は3社程度が目安です。5社・10社と増やすと比較が難しくなり判断が鈍ります。
無料の価格査定における注意点

無料だからといってデメリットがないわけではありません。代表的な注意点は、不動産一括査定利用時の「高額査定(いわゆる高預かり)」です。
専任媒介契約を取るために、実勢価格より数百万円高い査定額を提示する業者がいます。売り出した後に反響がなく、数ヶ月後に「値下げしましょう」と提案されるパターンです。売出し直後の「鮮度の高い時期」に反響が出にくいため、結局は損をしてしまうことが多いのが実情です。
不動産一括査定を利用する場合は、査定額より「根拠」を見てください。「なぜその価格か」を具体的な成約事例で説明できる担当者かどうか、それが業者選びの実質的な基準です。
実態より高すぎる不動産査定の弊害については、以下の記事を参照してください。

費用請求に疑問があるときの相談先

費用をすでに支払ってしまった場合でも、返金を求める方法がないわけではありません。
| 相談先 | 対応内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 都道府県の宅建業担当窓口 | 宅建業法違反の申告・行政指導 | 各都道府県ホームページ参照 |
| 消費生活センター | 業者との交渉あっせん | 188(消費者ホットライン) |
| 不動産適正取引推進機構(RETIO) | 専門的電話相談・ADR(裁判外紛争解決) | 0570-021-030 |
| 弁護士・司法書士 | 内容証明作成・少額訴訟支援・返金請求 | 初回無料相談を活用 |
都道府県の宅建業担当窓口(建築指導課など)は、免許権者として業者への行政指導・処分権限を持っています。ただし処分権限はあるものの、直接的な返金命令は出せないため、民事上の解決には弁護士・司法書士への相談が別途必要になります。
請求額が60万円以下の場合、簡易裁判所の少額訴訟が有効です。原則1回の審理で結審し、費用は数千円〜1万円程度です。
相談前に準備しておくとよい書類:
- 業者から受け取った査定報告書・請求書
- 媒介契約書の控え(締結している場合)
- 「無料査定」と記載されていたウェブページのスクリーンショットやチラシ
- 担当者とのメール・LINEのやり取り
- 費用を請求された日時・担当者名のメモ
まとめ

「不動産会社の査定が有料だと違法か」という問題を、もう一度整理しておきましょう。
違法性が高い場合
- 媒介契約の獲得を目的とした通常の査定で費用を請求する行為(宅建業法34条の2第2項・46条違反)
- 「査定料」「調査費」「書類作成費」などの名目で仲介手数料に上乗せする行為
- 宅建業者が「不動産鑑定評価書」という名称で有料の書類を作成する行為(不動産鑑定評価法3条・39条違反)
適法と解される場合
- 不動産鑑定士が鑑定評価法に基づき行う鑑定評価(有料が正当)
- 媒介業務と切り離した独立のコンサルティング契約として、実態を伴って行われる場合(宅建業法34条の2第7項・46条通達)
- 依頼者の事前の特別な依頼と承諾に基づく遠隔地出張費・特別広告費の実費
売却を前提とした一般的な査定であれば、有料を求めてくる業者には慎重になるべきです。不安な費用請求を受けた場合は、支払う前に都道府県の宅建業担当窓口か消費生活センター(188)に相談することをおすすめします。
不動産の売却を検討している方は、ウルズンの無料相談窓口もご利用ください。
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参考法令・資料
- 宅地建物取引業法 第34条の2、第46条
- 昭和45年建設省告示第1552号(最終改正:令和6年国土交通省告示第949号)
- 「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」(国土交通省)
- 不動産の鑑定評価に関する法律 第3条、第39条
- 不動産適正取引推進機構(RETIO):https://www.retio.or.jp/
- 国民生活センター:https://www.kokusen.go.jp/

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