検査済証がない場合でも売買は可能ですが、押さえておきたい重大リスクもあります

検査済証がなくても、家の売買は成立します。

筆者は宅建士として数多くの中古物件を仲介してきましたが、「検査済証がないから売買できなかった」という事例は一度もありません。検査済証は、中古住宅の売買において必須の書類ではないからです。

ただし、一点だけ確認しておきたいことがあります。「そもそも完了検査を受けていない(未取得)」のか、「受けたけれど書類をなくした(紛失)」のか。この違いによって、その後の対応は大きく変わります。

紛失であれば、自治体で建築台帳記載事項証明書(数百円、原則即日)を取得することで、多くの金融機関は適法物件と同等に扱います。未取得の場合は、住宅ローン審査のハードルが上がり、フラット35の活用など別のルートを検討することになります。

さらに2025年4月の建築基準法改正により、増改築やリノベーションを前提に購入する場合、以前より注意が必要な場面が増えました。売買そのものと、売買後の使い方は、分けて考えることが大切です。

この記事では、検査済証がない物件を売却する際の実務的な手順を、具体的に解説します。

この記事は、宅建士資格を保有するアップライト合同会社の立石が監修しました。

目次

検査済証がなくても家の売買は可能です

筆者は相当数の不動産売買を仲介してきましたが、「検査済証がないから売買できなかった」という事例はありません。

検査済証とは、建築基準法で定められた完了検査に合格すると発行してもらえる書類なのですが、中古住宅の売買には必須の書類ではないからです。

ただし、次に解説するように「そもそも検査済証を取得しなかった」から検査済証がないという場合は、少々注意が必要になります。

注意したいのは検査済証「未取得」か「紛失」か

JSHI公認ホームインスペクター試験では、「そもそも完了検査を受けずに、検査済証を取得しなかった建物は違法建築である」と定義しています。

法律上やや雑な定義ではありますが、「最初から検査済証を取得しなかった」場合、違法建築に該当する可能性があると理解してもよいでしょう。

建築基準法第7条では、建築主は工事完了後に完了検査を申請し、建築主事等は建築基準関係規定に適合していると認めたとき、検査済証を交付する仕組みになっています。 その点、完了検査に適合しておらず確認済証が交付されなかった場合、かなり問題があることになります。

とくに、最近(2000年代以降)建築された住宅で検査済証がない、という場合は注意が必要です。この背景については後述します。

一方、検査済証は交付されたが「紛失した」という場合は、違法建築に該当しません。その住宅の売買そのものについて、大きな障壁はありません。

検査済証とは建物の完成時に交付される「完了検査の結果」です

家を建てるとき、役所(または指定の確認検査機関)とのやり取りは、一度ではありません。 工事の前と後、それぞれに確認の手続きがあります。

建築確認は「工事前」のチェック

建物を新築するとき、まず設計図を役所に提出して審査を受けます。 「この設計は建築基準法の基準を満たしているか」を確認するための手続きで、これを建築確認申請といいます(建築基準法第6条第1項)。

審査を通過すると、「確認済証」が交付されます。 この書類が手元に届いてはじめて、工事に着手できます。

完了検査は「工事後」のチェック

確認済証をもって工事を進め、建物が完成したら、今度は「実際に図面通りに建てられているか」を現地で確認してもらいます。 これが完了検査です(同法第7条第1項・第2項)。

工事が終わった日から4日以内に申請する義務があります。 設計段階での審査を通過していても、完了検査は別の手続きです。この点を混同する方が少なくありません。

検査済証は、完了検査に通ったことを示す書類

完了検査を受けて、基準に適合していると認められると、「検査済証」が交付されます(同法第7条第5項)。

検査済証は、「この建物は適法に完成した」ことを示す唯一の公的な書類です。 確認済証(工事前)と検査済証(工事後)は、それぞれ役割が違います。 どちらかだけでは、建築プロセス全体の適法性を証明することはできません。

古い家に検査済証がないのは、珍しい話ではありません

平成の前半、あるいはそれより前に建てられた一戸建てに検査済証がないケースは、中古市場では珍しいことではありません。

平成10年以前は完了検査を受けないまま引き渡す実務が少なくなかった

当時、建築基準法上では完了検査の受検は義務でした。 しかし、一般的な木造一戸建ては、完了検査前であっても入居を始めることが事実上妨げられない制度となっていました。 法律上、「完了検査前の使用制限(同法第7条の6)」の対象から、共同住宅以外の住宅が適用除外とされていたためです。

工事が終われば検査を受けずに引き渡す。 銀行もそれで融資を実行する。 登記もそのまま通る。

そういった実務慣行が広く定着していた時代があったのです。

2000年前後から完了検査の運用は大きく変わった

転換点は平成10年代に入ってからです。 民間の確認検査機関が参入し、国土交通省が受検率向上に向けた指導を打ち出しました。 金融機関に対しても、検査済証の写しを融資実行の条件に加えるよう指導が入りました。

その後、完了検査率は急速に上昇し、現在の新築ではほぼ100%に近い水準となっています。 昔の実務と、今の実務は大きく違います。

「古い家だからない」はあり得るが、確認は必要

「平成初期に建てた家だから検査済証がなくて当然」という話ではありません。 適法に完了検査を受けた物件でも、書類を紛失しているだけというケースは少なくないからです。

まずは「未取得(完了検査を受けていない)」なのか「紛失(受けたが書類がない)」なのか、それを確認することが先決です。 この分岐によって、その後の対応はまったく変わってきます。

筆者の自宅もありません

筆者は1970年代に建築された鉄骨造の一戸建てを購入し、フルリフォームして住んでいます。実はこの建物も建築確認は受けていますが、完了検査は受けていません(記録なし)。それでも普通に流通しており、増築を伴わないフルリフォームであれば、特に制限なく実施できています。

住宅ローンについて金融機関の見方は厳しくなります

売買そのものは成立できても、買主が住宅ローンを使えなければ取引は前に進みません。 ここは、売主としてもしっかり把握しておきたいところです。

検査済証がないと、金融機関は法適合性を確認しにくい

金融機関が検査済証を気にする理由は、建物の安全性そのものへの不安というより、担保評価の問題です。 「万一のとき、この物件は適正に売却できるか」という判断をするうえで、適法性の証明がないと、担保価値を低く見積もらざるを得ないのです。

融資可否は一律ではなく、物件ごとの個別判断になる

「検査済証がなければ絶対に融資不可」とも、「問題なく通る」とも断言できません。 金融機関によって判断基準が異なり、書類の状況によっても結果は変わります。

紛失の場合は、比較的スムーズなことが多いです。

完了検査を受けた記録が建築台帳に残っていれば、役所で「建築台帳記載事項証明書」を取得できます(数百円程度、原則即日交付)。 この証明書を提出することで、多くの金融機関は適法物件と同等に扱います。

未取得の場合は、民間ローンのハードルが上がります。

完了検査を受けた記録がない場合、台帳記載事項証明書に検査済の記載はありません。 コンプライアンスを厳しく運用している金融機関では、融資を見送るケースもあります。 「個別審査次第」という言葉が、この場合には特に重くなります。

フラット35や適合証明で道が開ける場合もある

未取得の物件でも、住宅金融支援機構が提供する【フラット35】の中古住宅向け制度を活用できる場合があります。

第三者機関による「適合証明検査」を受け、適合証明書が取得できれば、【フラット35】による融資が可能になります。 検査内容は、接道・面積・居室・劣化状況など、居住性に関わる実態確認が中心です。

また、一定の技術基準を満たす中古住宅については、住宅金融支援機構が定める「確認書」を提出することで、現地の物件検査を省略できる仕組みもあります。

確認日が昭和56年6月1日以降(いわゆる新耐震基準)の物件であれば、図面による耐震審査が原則免除される点も、実務上の大きなポイントです。

買主のローンが不安定になると、売却活動そのものに影響が出ます。 売主の立場であっても「どういう融資ルートがあるか」をあらかじめ整理しておくことは、決して無駄ではありません。

本当に困るのは、売買後に増改築や用途変更をしたい場合

「売買はできた。でも、その後に問題が出た」というのが、検査済証のない物件で最も起きやすいトラブルです。 売買の場面より、購入後の工事・使い方に関わる場面で影響が出ます。

増築・用途変更・大規模修繕では建築確認が問題になる

建物を使い続けるだけなら、検査済証の有無が直接の障害になることは多くありません。 問題になるのは、確認申請を伴う工事や用途変更を行おうとしたときです。

確認申請の書類に、既存建物の確認済証・検査済証の交付番号等を記載する必要があります。 それがない場合、審査機関は既存部分の適法性を判断できず、申請が受理されないことがあります。

10㎡を超える増築では、建築確認が必要になる場合がある

防火地域・準防火地域の外であっても、床面積が10㎡を超える増築を行う場合は、着手前に建築確認申請が必要です(建築基準法第6条)。

このとき、既存建物の検査済証がない(かつ台帳にも記録がない)と、建築士による「現況調査」が必要になる場合があります。 費用は数十万円以上、期間も数ヶ月単位になることがあり、買主にとって想定外の負担になることがあります。

用途変更(住宅から介護施設・民泊・店舗など)でも、同様の問題が起きます。 売買の段階でそのリスクが十分に伝わっていなかった場合、後から売主が責任を問われた判例もあります(東京地裁平成28年3月10日判決)。

2025年4月以降は、大規模リフォームでも確認が必要になる場面が増えた

2025年4月1日の建築基準法改正(いわゆる4号特例の見直し)により、木造一戸建てにおいても、大規模修繕や大規模模様替えで建築確認申請が必要になる範囲が大きく広がりました。

これまでは確認申請なしで行えたスケルトン改修が、現在では確認申請の対象になるケースがあります。 リノベーションを前提に購入する買主が増えているなかで、この法改正の影響は無視できません。

建築士への相談が必要になるケース

検査済証がない(未取得)建物で確認申請が必要になった場合、現在は「既存建築物の現況調査ガイドライン(第4版・令和6年12月策定)」に基づく手続きが必要となります。

かつて使われていた旧ガイドライン(「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」)は、2025年4月1日をもって廃止されています。 現行の情報に沿った手続きを進めないと、途中で行き詰まる可能性もあります。

ガイドラインに基づく現況調査は、単純に検査済証の代わりになる書類ではありません。 建築士が当時の図面や登記情報などから建築時期を特定し、当時の法規への適合状況を確認する、専門的な調査・協議のための資料です。

当時の図面や工事請負契約書が残っている物件は、この調査が比較的スムーズに進みます。が、書類が何も残っていない物件は、調査そのものが難航することがあります。

売買だけであれば、検査済証の有無が直接の問題になることは多くありません。 ただし、買主が将来のリフォームや用途変更を検討している場合、事前に状況を整理して伝えておくことが、取引の安全につながります。

違法性そのものより「買主が安心して買えるか」が問題

筆者の経験上、「検査済証がないからといって即問題になるわけではない」という点を知らない人が多いことも、問題を複雑にしています。

かつて沖縄県宜野湾市にある一戸建て住宅を仲介したとき、客付けした那覇市のマンションデベロッパーから、罵倒されたことがあります。

「あなたは検査済証がない建物を平気で仲介しているのですか? 宅建業法にも反する違法行為ですよ!」

と、営業所の所長からいわれたのですが、正直「この立場の人がここまで無知なのか」と驚いたことを覚えています。

結果、相手が間違いだと理解して謝ってきたのですが……問題は、こういう人が存在するために、必要以上に不安になるお客さんがいること。

この点、しっかりした不動産仲介業者に入ってもらい、売買の相手に「ただちに問題になることはないが、増改築の際などには問題になり得る」という、正しい知識を伝えてもらう必要があるでしょう。

次のような点を正しく理解し、買い手に伝えるのがよいでしょう。

  • 違法建築となる場合、ならない場合の切り分け
  • 増改築時などの具体的手続き
  • 住宅ローン審査にどう影響するかの考え方

もちろん、検査済証がちゃんと残っている家に比べると不利な点もありますが、それでも状況を理解できれば、買主も安心して売買の判断ができます。

検査済証がない家を売るときの現実的な進め方

建築確認済証に関して、筆者は一戸建て住宅を仲介するときには以下の手順で調査をすすめています。

STEP
売主の手元資料を確認する

確認済証、検査済証、建築図面、設計図書、増改築履歴を探します。 

STEP
自治体で台帳調査をする

確認済証や検査済証がない場合は、自治体窓口で建築確認番号、検査済証番号、交付年月日を確認します。

STEP
現況調査を行う

建物の劣化、増改築、越境、接道、用途地域、建ぺい率・容積率などを確認します。 特に検査済証がなく、増改築がなされている場合は注意が必要です。

STEP
売り方を決める

調査内容を踏まえ、中古住宅、古家付き土地、解体前提、買取向けのどれで出すかを決めます。

STEP
価格に反映する

住宅ローンや再利用に制約が出る可能性があるため、通常の中古住宅にくらべて価格調整が必要になることがあります。

STEP
買主に早めに開示する

契約直前ではなく、内覧前後の段階で説明します。 売主の了解があれば、物件資料に概要を記入しておくなど、早めに、かつ慎重な対応を行います。


上記のように対応していけば、検査済証がない物件でもスムーズに売却を進めることができます。

まとめ:検査済証がない家でも売却は可能です

検査済証がなくても、不動産売買は成立します。筆者の仲介経験でも、これが理由で取引ができなかったことはありません。

ただし、ぜひとも把握しておきたい注意点があります。「完了検査を受けていない(未取得)」か「受けたが書類をなくした(紛失)」かの違いです。

紛失であれば、自治体で建築台帳記載事項証明書を取得することで、多くの金融機関は問題視しません。しかし、完了検査未取得の場合は住宅ローン審査のハードルが上がり、フラット35の適合証明など別のルートを検討することになります。

売買そのものより、購入後の増改築・リノベーションで影響が出やすい点も、事前に押さえておくべきことです。とくに2025年4月の建築基準法改正以降、木造一戸建ての大規模修繕でも確認申請が必要になる場面が広がっています。早い段階で状況を整理し、買主に正確に開示することが、取引の安全につながります。

検査済証がない物件の売却、個別に相談してみる 

上記リンクから、沖縄県内にある検査済証がない不動産について相談できます。

検査済証がなくても、正確な情報さえあれば対応は可能です。まず現状を確認することが、最初の一歩。ぜひ相談してみてください。

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