沖縄の路線価が上昇中 住宅ローン返済が厳しく、手放す人も増えている現実とは?
2025年、沖縄の不動産市場はこれまで以上に熱を帯びています。
特に「路線価の上昇」は、不動産売買や相続、住宅ローンの支払いといった身近なテーマにも関わるものとして、大きな注目を集めています。
私自身、沖縄で不動産業に携わってきた中で日々感じているのは、
「土地の評価は上がっているのに、住む人にとっての暮らしやすさや支払い能力は比例していない」というギャップです。
今回は、なぜここまで地価が上がっているのか、そしてその裏側で何が起きているのか。
現場の実感と最新データを交えながら、なるべくリアルな視点でお伝えしていきたいと思います。

沖縄の路線価、2025年も上昇 東京都に次ぐ全国2位
2025年7月1日に発表された国税庁の最新路線価データによると、沖縄県の平均上昇率は+6.3%。
これは全国で東京都(+8.1%)に次ぐ、堂々の全国2位です。
これで沖縄の地価上昇は11年連続。不動産価値の底堅さを物語っています。
ちなみに、今年特に注目されているのが以下のエリア
- 那覇市久茂地3丁目(国際通り):1㎡あたり156万円(前年比+4%)
- 宮古島市平良西里(西里大通り):1㎡あたり16万円(前年比+18.5%)
18.5%の上昇って、全国的に見てもかなりの伸び率です。
もう正直、「ちょっとしたバブルじゃないか?」と思えるような状況です。
関連資料:令和7年分の路線価等について|国税庁
順位 | 都道府県 | 地点 | 上昇率(%) | 評価額(万円/m²) |
1 | 東京都 | 台東区浅草1丁目 雷門通り | 29.0% | 578 |
2 | 東京都 | 足立区千住3丁目 北千住駅西口 | 26.0% | 702 |
3 | 東京都 | 中野区中野5丁目 中野駅北口 | 24.7% | 686 |
4 | 福岡県 | 福岡市東区箱崎 JR箱崎駅前 | 22.4% | – |
5 | 東京都 | 杉並区上荻1丁目 青梅街道 | 21.6% | 406 |
6 | 東京都 | 杉並区高円寺北3丁目 商店街通り | 20.1% | 293 |
7 | 沖縄県 | 宮古島市平良字西里 西里大通り | 18.5% | 16 |
8 | 東京都 | 港区港南3-7-23 | 18.4% | 148 |
9 | 東京都 | 北区滝野川5-6-4 | 17.3% | 88 |
10 | 東京都 | 渋谷区渋谷4-2-23 | 16.2% | 165 |
11 | 福岡県 | 久留米市東町 西鉄久留米駅前通り | 16.1% | – |
12 | 沖縄県 | 北谷町字美浜 町道美浜1号線 | 12.0% | 28 |
13 | 福岡県 | 福岡市早良区西新4丁目 明治通り | 12.3% | – |
14 | 沖縄県 | 那覇市おもろまち4丁目 那覇中環状線 | 9.1% | 96 |
なぜここまで路線価が上がっているのか?
価格が上がるには、当然それなりの理由があります。
いくつかの要因が複雑に絡み合っているのですが、現場にいて肌で感じるのは以下のようなことです。
人口がまだ増えている数少ない地域
沖縄県は、全国的に人口減少が進んでいる中でも、数少ない「人口が増え続けている地域」のひとつです。
国勢調査確報値に基づく推計人口のデータでは、2025年時点での人口は約147万人。さらに驚くべきは、「若年層の人口割合が日本一」という事実。
つまり、若い世代や子育て世帯が多い=住宅需要が底堅いという構造があります。
関連資料:沖縄県の推計人口
インバウンド需要の回復+観光施設ラッシュ
LCCの新規路線や、コロナ明けの観光需要が戻ってきていて、アジア圏からの観光客がぐっと増えています。
2024年のインバウンド消費額は1,598億円。前年比で+13.6%。
これがどのくらいすごいかというと、コロナ前の水準にだいぶ近づいてきているレベルです。
その影響で、観光地周辺ではホテルや商業施設の新築・再開発が一気に進み、当然その分、土地価格も押し上げられています。
関連資料:インバウンド消費動向調査2024年暦年(速報)及び10-12月期(1次速報)の結果について | 2025年 | 報道発表 | 観光庁
リゾートアイランドの価値が急上昇
中でも宮古島や石垣島は、特に投資熱が高まっているエリアです。
- ヒルトン系ホテル(キャノピーbyヒルトン沖縄宮古島リゾート)が建設中
- NOT A HOTEL ISHIGAKI『EARTH』は、1棟42億円という高額物件で話題
こうしたリゾート系の投資や別荘需要がじわじわ増えていて、「あの島がこんなに高くなるとは…」という声もよく聞きます。
観光系の投資案件や別荘ニーズは確実に増えており、「土地にお金が集まっている」という印象です。
沖縄本島も例外ではない 那覇・北谷・名護の動き
那覇や北谷エリアでは、県外の投資家が次々と物件を買っている状況が続いています。
恩納村では、フォーシーズンズの巨大リゾートが2027年春に開業予定。
ホテル127室、コンドミニアム124室、分譲ヴィラ28戸というスケール感。
名護では、2025年夏に開業予定のテーマパーク「ジャングリア沖縄」を中心に、周辺エリアでは商業施設や宿泊施設の新規計画も進行中で、地価の先高感が強まっています。

それでも、なぜ物件は売れているのか?
価格がここまで上がっているのに、「物件が売れていくスピードが落ちない」というのは、一見すると不思議かもしれません。
私の実務の中では物件が次々と売れていく状況が続いている背景には以下のような理由があると考えております。
県外からの移住・セカンドハウス需要が根強い
私自身、首都圏や関西圏からの移住者やセカンドハウス需要のお客様と多く接してきました。彼らにとって、沖縄の不動産価格は首都圏や関西圏の物件価格と比較すると「まだ手が届く」と感じるようです。
特に、
- モノレール沿線や中心部で利便性重視
- 海の近くで「沖縄らしさ」を重視
という2極化したニーズがあり、それぞれに物件が流通しています。
そのどちらにも、それなりに供給があるため、動きが鈍らないという印象です。
関連資料:p0-1表紙
木造住宅の人気とデベロッパーの進出
沖縄=RC住宅(鉄筋コンクリート)というイメージはまだ根強いですが、ここ数年で県外ビルダーの木造住宅が浸透してきています。
飯田グループをはじめとした本州のビルダーが、木造のコストメリットを活かし、住宅供給を加速。建物価格が抑えられる分、土地にコストを割けるため、売れ行きがいいのです。
私も木造住宅に対する抵抗感が薄れてきた買主を多く見るようになり、時代の変化を感じます。
関連資料:Adobe Photoshop PDF
金融機関の「50年ローン」が広がっている
以前は35年ローンが一般的でしたが、最近では地方銀行を中心に50年ローンを提供するところが増えています。
「月々の支払いが抑えられるなら、少しでも長く組んでおきたい」という若い世代も多く、実際に組む方が増えてきました。
もちろん、リスクがゼロではないですが、「今買わないと手が届かなくなるかも…」という心理が強く働いています。
ただし、上昇の裏には手放す人も…
ここまで見ると「沖縄の不動産はバラ色だな」と思うかもしれませんが、現場では無理して買ってしまった人が手放すケースも増えてきているのが正直なところです。
- 借入期間を長くして月々の支払いが軽く見えても、実際は金利負担が重い
- 共働き前提でローンを組んだが、出産や転職で収入計画が崩れた
- 固定資産税や管理費など、後からくる費用の負担が思ったより大きい
「買った時はなんとかなりそうだったけど、今は生活が回らない」といった相談も少なくありません。

今後の展望 沖縄の地価はまだ伸びる可能性がある
私が沖縄に戻ってきたのは約4年前。その頃と比べると、エリアにもよりますが、肌感覚で新築戸建の価格は1.2〜1.5倍ほど上がっています。
「これ以上、上がらないでくれ」と思う購入者が多い反面、周囲の動きを見ると、まだ地価が伸びる余地はあるようにも感じています。
今後の沖縄の不動産市場が引き続き活況を維持する背景には、いくつかの重要な動きがあります。単に観光や移住人気といった表面的な要因だけでなく、「構造的な強み」や「長期的視点での開発」が支えになっている点に注目すべきです。
世界が注目する観光立地としてのブランド価値
沖縄は、もはや「国内の観光地」にとどまらず、アジアからの富裕層を中心にした「国際リゾート」としての立ち位置を確立しつつあります。
航空路線の拡充や外資系ホテルの進出により、「リゾート=沖縄」という認識が海外投資家の間でも根付き始めています。
この流れが続けば、観光地に隣接したエリアや利便性の高い場所の不動産価値は、今後も上昇していく可能性が高いです。
将来性を秘めた「若い街」としてのポテンシャル
全国的に高齢化が進む中で、沖縄は全国トップの【若年層比率】を持つ非常に珍しいエリアです。
新たに家庭を築く世代や、子育て世代の人口が多いということは、今後も住まいの需要が継続的に見込まれるという強みにつながります。
加えて、単身世帯の増加などライフスタイルの変化が、住宅の多様化を後押ししており、新築や戸建て・分譲マンションなど複数のジャンルでニーズが安定しています。
軍用地の返還と【未来都市】への再構築
現在も段階的に進められている米軍基地の返還跡地では、那覇軍港やキャンプ・キンザー跡地などを中心に、都市機能の再構築が進行中です。
これは単なる宅地化ではなく、商業施設や公共インフラ、教育機関なども含めた【大規模な街づく】という側面を持っています。
こうした再開発が現実のものになれば、従来とは比べ物にならない規模での資産価値の上昇が見込まれます。
終わりに:価格に踊らされない判断を
不動産の価値が上がること自体は悪いことではありません。
しかし、その上昇に踊らされて「今後も価値が上がり続けるから、背伸びして物件を購入する」というのは、避けたい未来です。
私としては、「今だから買える」という感覚だけでなく、「数年後も無理なく返済できるか?」という視点で物件を選んでほしいと強く感じます。
沖縄の土地は、これからも注目され続けるでしょう。
ただし、その熱狂の裏で見えづらくなっている【現実】に、少しでも目を向けていただけたらと思います。